この
【裁縫教授書】の特徴は、上欄と下欄に区切られていて、
上欄には、「裁縫について すべての心得ともなるべきもろもろの
事項を初学者斯道を学ぶの一助たらしめんとす」と書き記し、
下欄には、「裁縫に関する順序方法の大略をしめす」と書かれている。
つまり、
「家庭科に於いての基礎基本を上欄に、
実技的内容を下欄に書いていますよ。」ということであろう。
よく読んでみると、ほんとうに感心するとともに面白さを感じて来る。
《衣類の選び方》などについても書いてあり
一、衣服を選むには各自の品位によりてよく適合するものを用ふべし
然れども富貴の人の質素な衣服を着けたるは...
二、衣服を選ぶには年齢に適するものを選むことを肝要なり
長けたる人達の、はでやかなる衣着けたるは見悪くきものなり
さりとて年若き処女の あまりに地味なるものを着たるも大人びて
愛らしからず よく注意して着くる...
など、日本人気質がよく表れている。
「服選びは、自分に合ったものを選び、年をとって派手なものを着るとみっともない。
かと言って、男性経験のない若い女性が地味なものを着ると大人びて(老けて)見え、
若さを感じられず可愛くないので注意が必要。」と、言いたいのであろう。
確かに、間違いではない。(笑)
また、
《しみ抜きの方法》は、細かく書かれていて、
一、 雨のかかりたる衣服
二、 インキのつきたる衣服
三、 渋のつきたる衣服
四、 酒のしみのつきたる衣服
五、 油にてしみのつきたる衣服
六、 垢のつきたる衣服
七、 醤油にてしみのつきたる衣服
八、 石油のかかりたる衣服
九、 うみのつきたる衣服
十、 汗のつきたる衣服
十一、蝋のつきたる衣服
十二、鳥もちのつきたる衣服
十三、血液のつきたる衣服
十四、漆のつきたる衣服
十五、煙草やにのつきたる衣服
十六、ペンキのつきたる衣服
十七、墨のつきたる衣服
十八、小袖に垢のつきたるもの
十九、茶染みのつきたる衣服
それぞれ、一問一答のように、丁寧に説明書きされている。
「衣服に墨のつきたるは飯粒を揉みつけて洗ひ落すべし」とか、
「小袖につきたる垢を去るには 小豆を粉にして
熱き湯に引き茶五ふく程入れて
それにて洗へば、いかに、つきたる油垢にしても堕つるなり」など、
洗剤を使わない、地球に優しいエコな洗濯方法が書かれていて、
まさしく『明治時代の知恵袋』である。また、生地の裁断にも無駄がない。
これ↑などは、男性の服と子供の服を合わせとる裁断方法。
よく考えられて、圧巻!でございます。
http://www.youtube.com/watch?v=Kf-Tk4ZhzBA (You Tube) 荒井由実 「ひこうき雲」