私が編み物を始めたのは小学校高学年、手芸クラブに入ってからのことでした。
図書室の本を見ながら、試し編みを繰り返す日々。
編み物は失敗して覚えていくものですから、打たれ弱い人や飽きっぽい性格の人には向かない趣味だと思います。
なので、大人の女性全てが編み物が出来るわけではないですね。
そろそろ、5年生のナナちゃんにもかぎ針編みを教えてあげようかと、クリスマス用のミニ籠を作ることを提案しました。
一度も編み物をやったことのない子に...行き成りの「増やし目」。
これは、過酷ですが、教える側にとっても過酷なわけです。
編み物嫌いにしては大変。しかし、あえて、私はこう言いました。
「ナナちゃん、手芸は算数。特に編み物は算数だよ。6の段の掛け算を書いてみて。」
籠の底は6の倍数で成り立っています。
賢いナナちゃんは、いとも簡単に九九を超え、ノートの端までそれを書いていきました。
スイッチは入ったようです。
「籠に使うのは、鎖編み、細編み、引き抜き編み、この3種ね。」
ナナちゃんに、私は大人気ない意地悪をしました。
初っ端から聞きなれない編み名を伝えることは無く、それも漢字で書く必要はないのです。
画像手前で、私もまったく同じものを同じスピードで教えながら編んでいます。
私が、同じ年の頃、悪戦苦闘した増やし目をナナちゃんは簡単にこなしていく...
私には、この「賢さ」は無かった。なんとも羨ましい。
全ての教えが肥やしになっていく。吸い取られていくような、そんな気がした。
私の一時間が、ナナちゃんの一秒。
すぐに抜かされるな。