甘井りんごの5行日記

説得
実家に空き巣が入った夢を見た。
父が亡くなって、母(74歳)は一人暮らし。
なんだか心配になって、朝、電話をしてみた。

コール5回で、電話に出た。 まず、ほっとした。

「生きてるぅ?」と、私。
「生きてるよ。」と、母。
「ボケてない?」と、私。
「大丈夫。ボケてない。」と、母。

いつも、この挨拶から始まる。
会ったのは、5日前。
息子たちのお誕生日のお祝いを貰ったときだ。
一週間に一度は、私も、義妹も顔を出すことにしている。
そう決めたわけではないけど、お互いに、そう気を使う。

「空き巣に入られた夢を見たから、電話した。 なんか、あった?」と、私。
「何にも無いけど、これから、自転車で、歯医者さんに行ってくる。」と、母。
「え? 雨、土砂降りじゃん。 風、すごく強いよ。」と、私。
「大丈夫よ~ カッパ着て行くから。」と、母。

母は、どこへでも、どんな悪天候でも、自転車で行ってしまう。
一度、大雨の中、軽自動車と追突して、飛ばされ、自転車は廃車。
本人は、救急車で運ばれ、連絡を貰った父と私は、慌てて駆けつけ、
包帯グルグル巻きを想像して、集中治療室のドアを開けたら、
バンソーコー一枚オデコに貼って、「来てくれてありがとう!」って、
ニコニコ手を振っていた強運の持ち主だ。

一度、電話を切ったものの、朝の夢が気になる。
普段、寝たら、すぐに朝になる私が、数年ぶりに夢を見たのだ。
もう一度、電話をした。

「やっぱり、今日は、自転車は止めて。
 遅刻寸前の高校生の自転車通学じゃあるまいし、いい年してみっともない。
 予約の時間が間に合わないなら、歯医者さんに電話して、歩いて行くから
 遅れます。と、正直に話して、分かってもらって。」と、きつい口調で言う。

「雨の中、自転車乗ったお婆さんが、傘をさして、フラフラしていたら、
 車を運転する者にだって、すっごく迷惑なんだからね。」と、駄目押し。

「空き巣に入られた夢を見て、電話したのは、虫の知らせで、
 お父さんが、『止めてくれ!』って、私に多分、伝えてきたんだよ。
 お父さん死んじゃって、もう、お母さんしかいないんだからね。」と、もう、一発。


さあ、これでどうだ? と、私は、母からの返事を待った。

「そうする。歩いて行く。」と、母。 どうにか説得が効いてくれた。 ほっとした。
のんびりとした性格で、お嬢さん育ちのわりに頑固で、父と私は、いつも手を焼いていた。


数時間後、電話が来た。
「貴ちゃん、今、無事に帰りましたから、ご心配なく。
 歯医者の先生にも、今日は、歩きで正解ですよ。って言われちゃった~」と、母。

「あ~、良かったね。
 じゃあ、戸締り、気をつけて。空き巣に注意ね。ボケないでね。また寄るから。」

疲れました...。 Fu~ 実娘は大変です。


★この画像は、次男の朝練のため、朝5時に起きた時に撮ったものです。(一週間前)


http://www.youtube.com/watch?v=9AcXLZsdZZc

      (You Tube) さだまさし 「案山子」